バタアシ金魚/お茶の間　-時間が成熟させた漫画-：砂消しゴムで消せなかった物：SSブログ

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バタアシ金魚/お茶の間　-時間が成熟させた漫画-　[DVD/ビデオ/映画レビュー] [編集]

本日はちょっと方向を変えて漫画をレビュしたい。
もちろん、お笑いに関するものですが。。。

バタアシ金魚(望月峯太郎.)

お茶の間(望月峯太郎.)

ドラゴンヘッドの作者、望月峯太郎の初期の作品だ。

主人公、薫は高校の水泳部の練習で見かけた苑子に一目惚れ。
中耳炎にも関わらず速攻入部して猛アタック。
が、苑子には軽くあしらわれる。
苑子を振り向かせようと必死に水泳に打ち込んで
成長していく姿を描いたのが”バタアシ金魚”である。

”お茶の間”はその続編にあたり
社会人になってからの薫と苑子を描いたものだ。

どちらも当時、青春ギャグ漫画として静かなブームを呼び
映画化とTVドラマ化が、どちらの作品もされた。
(バタアシ金魚は筒井道隆、高岡早紀、お茶の間は渡辺まりな)

僕はこの作品が大好きだ。
しかし、この漫画で笑うことは、ほとんどない。
というか笑えないのだ。

1986年にバタアシ金魚第一巻が発売された。
今から20年近く前であり、バブルと呼ばれた時代がすでに始まっていた。
当時の若者を指して”三無世代”という言葉がある。
三無とは”無気力・無関心・無感動”を意味する。

この三無を相対化したのがバタアシ金魚だった。
主人公の薫は三無に全く当てはまらない!!
気力、関心、感動の深い男だ。
それゆえ、世間との衝突を繰り返し
そのギャップで笑いを取るという手法をこの漫画では使っていた。

バブル時代を生きた人達以外にこの空気感は伝わらない。

薫を一番良く表した台詞がある。
(細かくは台詞は違うかもしれない。。。ちゃんとチェックすればよかった。。。)

　薫：苑子君に金メダルをあげるよ
　苑子：あんたが、金メダルなんて取れるわけないでしょ
　薫：？？なんで？？水泳続けていれば金メダルが取れるのだよ。知らないの？
　苑子：バカじゃないの？

そう、一生懸命やることが恥ずかしいとされた時代に彼はまっすぐだ。
僕はバブルはとっくに終わっていた高校１年の時、この作品に出会った。
部分部分で笑えたが、それよりも薫のまっすぐで一生懸命なその姿勢に
熱いものが胸に宿り、今でも彼は僕の目標になっている。

この漫画は時間とともに成熟したのだ。

笑いとはこのような要素を持っている事が多い。
その時代の一瞬で笑えた物が、あとになるとまた別の意味を持ち
浮き出てくることがあるのだ。

これは、笑い自体が日常と距離をおいた視線で語られることが多いことに起因すると考える。

笑いを作るには客観的な視線を持つことが大切だともいえる。
その代表になる作品が”バタアシ金魚”と”お茶の間”だと感じており今回レビューをしてみた。
笑いに関わる作品は種類を問わず、時間が経過すると笑えなくなるものが多い。
しかし色あせることなく違った面白さを放つこともある。
それを示すかのように、TVドラマお茶の間のビデオはいつもレンタル中だ。

感動や愛と違い、2度楽しめる”笑い”って素晴らしくないですか？

2005-03-08 22:04 nice!(0) コメント(9) トラックバック(0)
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